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キャッチボール訴訟の考察 Ⅰ
2005年 02月 20日
<キャッチボール訴訟>投げた児童両親に賠償命令 仙台地裁
かなり世論の批判を浴びたキャッチボール訴訟判決、いったいどの変が問題なのか、事例を基に勉強がてら考えてみました。 ポイントはおおまかに以下の2点かと考えます。 Ⅰ:児童の「失投」に不法行為(民法709条)が認められるか Ⅱ:児童の親権者に監督者責任(民法714条)があるか 【Ⅰ:児童の「失投」に不法行為(民法709条)が認められるか】 709条の不法行為成立の要件として、以下の基本要件が必要とされます。 ①行為者の故意・過失 ②権利侵害 ③損害の発生 ④因果関係 そして以上を満たした場合には、原則として不法行為の成立が認められますが、それに よる賠償責任を負わない場合として以下の例外要件があります。 ⑤行為者に責任能力が無い場合 ⑥行為者に違法性阻却事由がある場合 [①故意・過失] 児童は被害者を殺そうとして投げたのでも、当たって死んでも構わない(未必の 故意)と思って投げたのでもないので、当然「故意」は認められません。 では「過失」はどうか? 「過失」とは、損害発生の予見可能性があるのに不注意でこれを予見せず、何ら かの行為を怠った結果回避義務違反と解されます。 判決ではここで、投球がそれ人に当たりケガをさせ、さらには死に至らしめる予見 可能性を肯定し、「過失あり」と判断したようです(判旨を読んだ訳ではないですが ニュースより)。 私はかなり疑問ですが、百歩譲って、損害を広く捉え、ボールを当ててケガ、さら にはそれが原因で死亡させる事とすれば、予見可能性も肯定出来るのか? しかしやっぱりせいぜい打撲でケガを負わせる位しか予見出来ないような。。 [②権利侵害・③損害の発生] 「権利侵害」とは不法性を意味し、侵害された利益と、侵害行為態様の比較で判断 されます。侵害行為はキャッチボールなので、ここでも侵害行為の不法性は極めて 低いですが、侵害された利益が「生命」なので、まあ権利侵害は肯定出来るでしょう。 「損害」は、今回は少なくとも子を失った親の精神的損害が肯定されます。 [④因果関係] 因果関係は通常「相当因果関係」と理解され、その行為からその結果が発生する のが社会通念上相当かという基準で判断されます 具体的には、全証拠を総合検討し、その因果関係が、通常人が疑いを差し挟まない 程度に確信を持ち得るレベルにある事が必要と考えられます。 今回の判決では原告の6200万の請求に対し、6000万の賠償を認めているので、 恐らく死の結果まで含めて因果関係が肯定されているのだと思われます。 ここもかなり疑問大です。小学4年生のキャッチボールの球が当たった人が死ぬ 事に疑いを差し挟まない人がどれだけいるのか?彼らが石を投げ合っていたとか、 刃物を投げ合っていた??とかなら、通常人もそれが原因で人が死ぬこともあると 考えるでしょうが、軟式ボールですからねえ。 今回死因と認定された「心臓震盪」が広く一般人に知れ渡っていれば、今回の事故 の相当因果関係も肯定されてもいいのかもしれませんが、通常人はほとんど知らな かったと思われますし、それ以外の原因は思いつかないし。 外傷すら与えない衝撃で人が死ぬなんて疑いをもたざるを得ない気がします。 以上、「過失」および「因果関係」については、甚だ疑問が残りますが、今回の判決では ほぼ全て肯定され、不法行為だと認定されたようです。 賠償額の算定も、上記の判断に基づいてなされますので、今回は原告が主張した 「子の死亡による損害」の算定額ほぼ全てが認められた模様です。 [⑤責任能力・⑥違法性阻却事由が無い事] 責任能力は、およそ12~13歳程度とされています。今回の児童は小学4年生。 よって責任能力は無しです。 違法性阻却事由というのは、正当防衛なんかの特殊な状況において問題となるの で、今回の事故にはなさそうです。 以上より、責任能力の無い児童は晴れて?不法行為による賠償責任を負う事はなく なりました。 ここで、このように責任能力の無い者から不法行為を受け損害を被った被害者を保護 する趣旨で、その者を監督する監督者の責任が問われるのです。 Ⅱへ続く。。。
by ex-keita17
| 2005-02-20 17:22
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